大型台風から家族の命を守る方法

本当に怖かった荒川の増水

2019年10月12日に日本に上陸した大型の台風19号ハギビスは、関東地方から東北地方に甚大な被害をもたらしました。

上陸前から強い勢力であることがニュースなどで報じられていたにも関わらず、上陸直前まで正常性バイアスがはたらいてしまい、具体的な手段を講じておりませんでした。

前日の10月11日(金)にようやくLINEで家族と打ち合わせをして、台風19号の勢力が尋常ではない事がわかってきたので、念の為、同居している祖父母と付添の妻・娘を浸水の被害が及ばない地域に避難させました。

私は息子と二人で家で待機をし、自宅のそばを流れる荒川が決壊してしまう可能性が出たら避難する予定でおりました。

台風上陸予定の12日はいつものように自然に訪れましたが、普段のような家族の空気がそこにはありませんでした。

息子と二人でテレビを観たり音楽を聞いて過した時間はあっという間に経過し、遂に上陸の時間を迎えると落ち着いた様子の息子とは裏腹に私は不安が高まり徐々に緊張してきました。

そこに留まれば命が危ない

江東5区と呼ばれる江戸川区、墨田区、江東区、足立区、葛飾区は大きな水害が起きればその多くが浸水し約250万人が被災すると言われていますが、実際今回の台風でハザードマップの注意書きに書かれているような避難行動を取ることができたのでしょうか。

荒川が決壊してしまうと隣接している街は5M以上の規模で浸水するだけではなく場所によっては建物自体が倒壊する恐れがあります。
住宅街には高層の建物は少ないのでその場にいる事自体が危険であることはハザードマップを見れば一目瞭然です。

少し前に話題になった江戸川区のハザードマップには「ここにいてはダメ」と書かれており、当時は過激にも感じたこの言葉も今回の被害の大きさを考えると、とても的を得た言葉であることがわかります。

https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e007/bosaianzen/bosai/kojo/kanrenmap/n_hazardmap.html

私が住む地域のハザードマップにも同じようにその場に留まることが危険であることが書かれていました。

江東5区で発令する避難情報は72時間前(3日前)から検討が開始されます。

48時間前(2日前)には自主的広域避難情報が発表されて江東5区以外の場所への避難を促されます。

24時間前(1日前)には江東5区以外の地域への避難が勧告され、9時間前になると広域避難が困難であるとの判断から垂直避難行動の指示が出されることになっています。

今回は当日になるまで避難に関する情報は発信されておりませんでしたが、実際は当日の午後から多くの住民が小学校などの避難場所に集まり、入場規制などが起こるほどの混雑があったと聞いています。

私の住む区では12日早朝に大雨警報が発表され2時間後に警戒レベル3の大雨洪水暴風警報が発表されました。

さらに3時間後に避難準備が発令されましたが、既述の通り24時間前の広域避難勧告ではなく避難準備でした。

しかし、約6時間後に避難勧告が発令された時には近所の小学校などは既に入場ができない状況で他の施設を急ぎ避難所として開放したほどでした。

息子と私はギリギリまで家に留まっておりましたが、避難勧告が出たので想定していた通りの行動に移りました。

正常性バイアス思考を停止して自主的な広域避難を実践

まず、地域の避難所は多くの人でいっぱいになるはずで、特にご老人や子どもたちを優先して収容すべきであるから、私達は初めから遠慮することを決めていましたが、他にも理由があります。

グルテンフリーなので配給される食事でお腹をこわすなどの症状が出てしまう可能性がありますので、私達は事前に握り飯とゆで卵を準備して避難に備えました。

更に、もし本当に荒川が決壊した場合、同じ区域の避難所に入ってしまうと浸水もしくは倒壊してしまう地域なわけですから、水害後約2週間は孤立してしまいます。

避難物資も不足することが予想されますので地域の避難所に大勢が身を寄せることは危険であると判断しました。

そして、携帯の電波が使えなくなった場合、Wi-Fiが使えない環境だと先に避難している家族との連絡も取れません。

以上のことを考えても水害から家族を守るためには水害が発生する地域に留まることこそ危険であることを前提として浸水被害が及ばない地域に息子と2人で避難しました。

その場所を提供してくれたO氏には心から感謝いたします。

勿論Wi-Fiも自由に使うことができましたので、荒川の水域情報を確認しつつ被害が大きくならないことを祈りました。

幸い荒川は決壊しなかったので、今回は住む場所を失うことはありませんでしたが今回と同じように台風などによる災害には今後も十分な警戒が必要です。

特に河川のそばに住んでいる私たちは、正常性バイアス思考を意識的にシャットダウンした上で臆病なくらい事前準備を行い広域避難をすることが最善です。

近隣住民の中には避難所に行く方、正常性バイアス思考がはたらいて自宅に留まり普段通り生活した方とに分かれたと思いますが、他人が動かないと動き出せない方が多いようで、誰かが避難したから私も避難するとか、誰かが避難していないから自分も避難しない。

というように自分や家族の生命を他人の行動に委ねてしまいがちです。

命に危険を及ぼす可能性が高い災害などの場合は、徹底して臆病になり、正常性バイアスを停止して、他人がどうであろうと即行動を起こすことこそ家族の命を守る正しい手段だと思いました。