SONIC Warriors 第6話
最初のユジンの命令で、イェソ救出に向かう予定だった音速飛行船は再びK国に進路を変えなければならなくなった。
ヨンウンがユジンと共にイェソの救出に向かったため、ヨンウンが開発した増幅装置を使うことができず、シャオティンは、ゆっくり船首の向きを変えている。
ヒエの能力を増幅したせいで、シャオティン自身も体力が消耗してしまった。
ヒエは今度こそ紅茶を用意して、二人の乾燥した声帯を潤す準備をしている。
独立解放戦線の迎撃ミサイルシステムの要所を1カ所破壊できたからと言って、K国までの道程でいつ攻撃されるか予想もできない。二人は体力を回復しつつ、慎重に船を進めることにした。
JUSTICE AND UNITY
K国は山岳地帯に拠点を構えていた。
この国はもともと自然が豊かで、多くの動物たちが生息していた。
チェヒョンやダヨンが住む城も山間にそびえ立ち、中世の古城のような雰囲気を醸し出している。
窓辺には小鳥たちがさえずり、中庭ではウサギやタヌキがのんびりと過ごし、木々の枝にはリスが飛び跳ね、ドングリをほおばりながら下を見下ろしている。
そんな、戦時中とは思えない静かな光景の中で、ヒカルはぼんやりと景色を眺めていた。
そして、目に涙をためながら、胸の中に自分を助けるために自らを犠牲にした父や母、そして自分に仕えてくれていた従者たちの姿を思い浮かべていた。
自分を救ってくれた尊い命に報いたいという思いは次第に、正義の心をさらに強靭なものにした。
「国同士が争っている場合じゃない。今は、みんなが心を合わせてこの星を救わなければいけない!」ヒカルの正義の炎は、実際にはJ国と敵対関係にあるK国のチェヒョンやダヨンと出会ったことによって、さらに大きく燃えあがった。
「マシロの意識が戻ったよ!」とダヨンが大きな声で叫んだ。
ヒカルが駆けつけた時には、マシロは久しぶりに再会するチェヒョンと抱き合って泣いていた。
その姿を見て、ヒカルも泣いてしまった。
「シロおねえさん、本当に良かった。」震える声で精一杯呟いたヒカルも、マシロのもとに駆け寄った。
K国の医療技術はとても素晴らしく、マシロの顔や体には傷一つ残っていなかった。
「この子は・・・ヒカルは本当に素晴らしい子よ。」とマシロがゆっくりと話し始めた。
「J国は産業が発展して、とても豊かになったのだけど、ソニックウェーブを使えない人々がたくさん集まってきてしまったの。」
つまり、非能力者の中でも他国で生きていくことが許されない無法者たちなどが、裏ルートを使ってJ国に不法入国し、次第に勢力を拡大してしまい、優しく寛大な気質のJ国の人々は、次第に飲み込まれていったのだ。
徐々に侵食していった非能力者は、いつの間にか正当な市民権を得るまでになり、勢力が拡大し、最終的にクーデターを起こすことになってしまう。
その親玉が暴君アンチだ。
「ヒカルは幼いころから私たち姉妹と一緒に特殊訓練を受けてきたの。」
ヒカルは天性の素質と英才教育によってずば抜けた才能を開花させていた。
「小さな体であのパワーは、正直尋常じゃないね。」納得したような笑顔でダヨンが答えた。
「こんなに可愛らしいのに、本当にそんなに強いの?」
チェヒョンはまだ半信半疑でヒカルをじっと見つめていた。
「お嬢様、お待たせしました。」そう言って、K国の兵士が2つのペンダントを持ってきた。
キョトンとしたマシロとヒカルは、あらためてチェヒョンとダヨンの胸元に輝くペンダントを見た。
「えっ!お揃い?」ヒカルはプレゼントをもらう子供のようにほほえんでいる。
「そう、お揃いよ。」チェヒョンがもったいぶって一言発した後、ダヨンがベットの横に立ち、ペンダントを握りしめながらつぶやく。
「Over、Over、Over!」
紫色の輝きがペンダントから放たれると、無数の細いロープのような繊毛が、ダヨンの全身を包み込んだ。
普段着を着ていたはずのダヨンの格好は、たちまち戦闘地域でヒカルと出会った時に着ていた戦闘スーツに早変わりした。
「すごい!」マシロもヒカルも驚きで瞬きを忘れている。
「でもちょっと怖い。」すぐさまヒカルが一言付け加えたとたん、4人の少女たちは大声で笑った。
DIG DEEP
イェソが自分の非力を責めながら、牢獄の扉を素手でたたき続けていたさ中、その反響音をかき消すかのような轟音が鳴り響いた。
そして、あたりが途端に紫色に染まり、牢獄全体が吹き飛ばされるほどの衝撃波が押し寄せてきた。
突然の事態に彼女の思考は全く追い付けない。
人は絶体絶命の窮地に立たされると、普段では考えられないような特別な力を発揮することがある。
いわゆる「火事場のクソ力」である。
あれだけソニックウェーブを出したくても出せなかったイェソには、力はほとんど残っていなかったはずである。
しかし、自分以外の無実の罪で捕らわれている人々を救いたい、もう誰の命も失いたくないという、純粋な魂が奇跡を呼び起こした。
なんとイェソは、無意識のまま紫色の光に呼応しはじめたのだ。
もともとイェソは、自ら意識してソニックウェーブを習得したのではない。
彼女のソニックウェーブは、生まれた時から自然に備わっていたもので、いわばもう一人のイェソといえるほど、独立したエネルギー体のようなものであった。
イェソは本能のままに弓を射るポーズで声を発した。
「スーパーソニック!」
イエソから放たれた紫色の光は、壁をゴーストのようにすり抜けて衝撃波に向かって一直線に進んでいき、襲い来る衝撃を完全中和した。
まるで霧が晴れるかのようにあたりが元の色に戻ってきたときに、イェソは正気を取り戻したが、同時にその場に倒れ意識を失ってしまった。
ヨンウンの放った強力な紫炎は、地上の兵器などを瞬く間に消滅させたが、その影響で衝撃が何倍にも膨れ上がってしまった。
イエソの本能が中和させなければ、イェソ本人は大丈夫だとしても、無実の罪でとらわれている多くの人たちを守ることはできなかったかもしれない。
しかし、独立解放戦線の部隊が駐屯していた基地などは、ほとんど消滅してしまい、敵の兵士たちは、だれ一人残っていなかった。