SONIC Warriors 第2話
勝手にこんな物語を書いてしまって、きっと誰かに怒られるだろうなと思っていたら、SNSで「小説の続き密かに楽しみにしてたんですが」とのコメントが!!
嬉しいのと恥ずかしいのが入り混じった、とっても複雑な感情ですが、せっかくなので続きを書いてみました。
生暖かい目で見守っていただければと思います。
AIRSHIP
ヒエとヨンウンそして二人の姫たちは、古い工業用の油や酸化した鉄の錆びた臭いが混ざる、廃棄物の山をかき分けて奥の方へと進んでいった。
最初のうちは衣服やヘアスタイルなどを気にしていたユジンとシャオティンも、その美しい顔や白く細長い手足を油まみれにして、必死に歩みを進めている。
真っ先に目的の場所に到達したヒエが、壁から垂れ下がっているひも状のスイッチを引っ張ると、くたびれた照明がチカチカと点滅を繰り返し、やがてオレンジ色に点灯した。
ほぼ暗闇に近かった廃棄物置き場は、オレンジ色の照明によって、なんとか見渡せるようになったが、それと同時に一面の汚さがよりリアルに感じられた。
左右に首を振りながら少し考えたヒエは、何かを見つけて、手のひらとこぶしをポンと軽くたたきながら、右に約90度向きを変えて、大きめの廃棄物の扉に手をかけた。
「あれ、開かない」
何度も力強くレバーを引くのだが、錆びついていてびくともしない。
「困ったな、ここのはずなんだけど」
その扉の向こう側に飛行船へと続く、ヒエだけが知っている秘密の通路があるは確かなのだが、扉は全く動かない。
4人は代わる代わる固い扉に挑戦するが、誰一人として勝てる見込みはなかった。
「ガサガサ!」
そんな4人の後方から大きな影がゆっくりと迫っていた。
廃棄物置き場は、空気が汚れていてソニックウェーブがうまく働かないためなのか、開かずの扉への挑戦に夢中になっていたからなのか、4人は大きな影の気配に全く気づかない。
「ガサガサ!ガサガサ!」
徐々に迫る大きな影。
「ガサガサ!ガサガサ!ガサガサ!」
ついに、くたびれたオレンジ色の照明によって映し出された大きな影が4人に迫ってきた。
「誰!」
ようやく気付いたヒエが叫ぶと同時に、大きな影は光の角度によって徐々に収束し、人間の手の形となり、一直線にヒエの右腕を掴んだ。
驚いた表情のヒエを睨みつけながら右手が答える。
「何をやっているんだ」
掴んだヒエの右手を高く上げて、影の正体が現れた。
「ああ、兄さん」
廃棄物置き場の扉が開けっ放しだったのを見たヒエの兄は、4つの人影を気付かれないように尾行し、今まさにヒトカゲのリーダーを捕まえた。
ヒエが兄と呼ぶ彼こそ、H共和国の子息であり、大空挺部隊の隊長であるカイその人であった。
ヒエと同じく美しい顔立ちのカイは、残る3人に軽蔑の眼差しを送りながら問いかけた。
「あなたたちは泥棒ですか?」
すぐさまヨンウンが答える。
「まあ、そういうことになります」
合理的に物事を進める性格の彼女は、不毛な議論に時間を費やすことが許せない様子で、言い訳をするどころか特徴的な美しい切れ長の両目で、カイを睨み返した。
「ちょっと待って、違うの!」
ユジンは、咄嗟にその場の空気を変えようとして釈明しようとする。
「ストップ!はい、そこまで」
カイがユジンの釈明を遮り、あきれたような口調で続けた。
「こんな臭い場所で議論することもないでしょう」
そう言うと、さっきまで開かなかった扉を片手で簡単に開いて見せた。
「ええっ!」
驚く一同に向かって顔を少し傾けながら答える。
「こいつを開けるにはコツがいるのさ」
カイ隊長は少しだけ少年の様な笑顔を見せた。
カイ隊長は正義感の強い青年で、幼いころから妹の面倒をみてきたためか、かなりの妹思いで、しょっちゅう妹のわがままを聞いてあげてしまうような性格だが、今回のヒエの行動は、簡単には許すことはできない。
「えっと、何ていうか、その」
あたふたするヒエを助けるようなタイミングでシャオティン姫が割って入る。
「カイ隊長・・・」
S国の礼儀作法に則った、右手のひじを左の手のひらで支えるような独特なスタイルで、発言の許しを請うシャオティンに、カイは無言で頷いた。
戦争の真っただ中であるにもかかわらず、当事国である3国の姫と対峙すること自体があり得ない状況であるが、それ以上に4人のソニックウェーブからは、全く敵意が感じられず、それ以上に温かい平和の光が溢れ出ていることにカイは驚いていた。
シャオティンは、S国の平和大使らしく、ケプラー星の行く末を案じていること、兄弟惑星である地球の存在と、その地球にこそケプラー星を救う力が存在することを丁寧に伝えた。
続けてユジンが、その地球に行くためには、どうしてもH国大空挺部隊が所有する音速飛行船が必要だということを訴えた。
「しかし、いくら音速飛行船でも300光年先の地球にはたどり着けないだろう」
無茶なことを言う4人を説得するようにカイが言うと、待ってましたとばかりにヨンウンがリュックの中から方程式が沢山書き込まれたノートを取り出してマシンガンのように説明しはじめた。
ヨンウン以外の全員が目をぱちくりさせて、脳みその機能が停止しそうになる。
「ヨンウン、お願い!もっとわかりやすく話して!」
ユジンが耐え切れなくなり訴えると、我に返ったヨンウンは、全員のせがむような眼差しから事態を察した。
「まぁわかりやすく言うと、これを使えば地球までひとっ飛びってことだよ!」
そう言って大きなリュックのチャックを半分までおろして、変換装置をカイに見せた。
FUSION
ダヨンとの再会を喜び合ったマシロと、J国大統領令嬢であったひかるは、ケプラー星の状況や各国の姫たちが星を救うために必死に行動していることや、全員で力を合わせて地球を目指さなければならないことをダヨンの適格な説明ですぐさま理解した。
C国のユジン、S国のシャオティン、H国のヒエ、K国のチェヒョンとダヨン、徐国のヨンウン、J国のマシロとひかる。
そしてマシロの妹であるイェソの9人こそが、平和の象徴である、ラベンダー色に輝くソニックウェーブを持ち続けているケプラー星最後の9人である。
この9人が心を合わせて最大出力のスーパーソニックを作りだすことができなければ、地球にたどり着くことは絶対に不可能だ。
「お姉さん、私につかまって」
そう言ってダヨンは、チェヒョンの待つK国に跳ぶために、マシロを背負い、ひかると共に隠れ家の扉をそうっと開いた。
途端、黒い炎を纏った弓矢がダヨンの鼻先をかすめた。
「敵か!」
すぐさま臨戦態勢を整えるダヨンだったが、マシロを背負っているだけではなく、K国からの移動にソニックウェーブを使い切ってしまったために、体力が回復しておらず、本来のパワーが出せない。
「くそっ!こんなタイミングで!!」
唇をかみしめるダヨンの横からひかるが弾丸のように飛び出した。
「私がひきつけるよ」
ひかるのソニックウェーブは、ダヨンにも引けを取らない高速移動が可能だが、そのスキルの正体は音速の連続ワープだ。
現れては消え、また現れる連続ワープを敵は目視することができない。
様々な方向にワープしながら黒炎の矢をかいくぐり、一気に敵の陣営を攻撃する。
前方の敵はひかるの攻撃になすすべもないように見えた。
しかし、ダヨンとマシロのいる後方からも黒炎の矢が降り注いだ。
「今度は反対側か!」
マシロを抱えながら黒炎の矢を振り払い、何とか逃れようとするダヨン。
増援で勢いを取り戻した前方の敵と戦い続けるひかる。
「このままじゃやられる」
その時、耳元でマシロがささやいた
「聞いて、ダヨン」
必死に逃れながら耳を傾けるダヨンにマシロが続けた
「あなたの超音速とひかるの連続ワープの力を・・・」
「あなたたちのソニックウェーブを融合させて戦うの!」
ダヨンとひかるのアイコンタクトが始まった。
マシロの言葉を最後まで聞くまでもなく、ソニックウェーブでその意図を感じ取った二人は、お互いに向けてラベンダー色の光を放ちあい声帯に意識を集中させる。
マシロは全生命力を使って自らを宙に浮かせ、傷ついた体で両腕を王冠を掲げるように高々と上げる。
その姿は、まさに女神そのものだ。
ダヨンとひかるのソニックウェーブが、その王冠を目指して左右から、らせん状にからみ始める。
マシロが両手を左右に力強く開いたその時、三人の声がまるでハーモニーを奏でるかのように同時に鳴り響いた。
「スーパーソニック!」
その瞬間、この世のあらゆるものが停止した。
いや、正確に言うと、ダヨンとひかるの能力が舞白の力で融合し、二人は音速をはるかに超えた光の速さで時間を跳躍したのだ。
マシロのソニックウェーブは、人によってさまざまな特徴を持つソニックウェーブの能力を融合し、新しい力を生み出すもので、S国のシャオティン同様、普通のケプラー人には無い特殊な能力だ。
敵は、止まった時の中で何が起きたのかもわからないまま次々と倒されていく。
空中で能力を使い果たし、気絶したマシロを二人がキャッチした時には、周りに敵は一人も残っていなかった。
ダヨンとひかるは微笑みあいながら
「やるな」
「あなたこそ」
と照れ臭そうにお互いを褒めたたえた。
やがて意識を取り戻した舞白を連れて、3人はチェヒョンの待つK国に跳んだ。