アルコール依存症の恐怖 その1
アルコール依存症
私自身はアルコール依存症と診断されたことは一度もありません。
しかし、父方の伯父と母方の叔父が二人とも、アルコール依存症を患い他界しています。
特に伯父については晩年一緒に暮らしていたこともあり、アルコール依存症の克服とスリップを繰り返し、最終的に命を落としてしまうところまでを実際に見届けています。
私自身お酒をよく飲むほうでしたので、伯父と叔父の末路を目の当たりにしてもそのことにショックを受けてお酒が飲めなくなったりしたことはありませんでした。
アルコール依存症に関する本も何冊か読みましたが、アルコールに依存する原因となりうることは様々あるようで、仕事や家族等とのかかわりなどが遠因となってアルコールの連続飲酒につながり、依存症となってしまうケースがあるようです。(ずいぶん昔に読んだのでちとあやふやですが)
伯父は、母親(私の祖母)による強烈なプレッシャー、三度の結婚失敗、子供の死、仕事のストレス等、様々なことが飲酒の原因になったと思われます。
実際にそばで見ていた私は、祖母の強烈なプレッシャーが最も伯父を苦しめていたと今でも思っています。
伯父との出会い
私の両親が離婚した後、行き場を失った幼い私と弟を祖父母と同居していた伯父が引き取ってくれました。その時すでに2度目の離婚後だったと記憶しています。
伯父は国家公務員で、相当忙しかったらしく、ほとんど顔を合わせた覚えがないのですが、家では、きつい香水の香りと(もしかすると整髪料かもしれない)靴墨の匂いに混じって、ウイスキーの匂いがいつも漂っていました。
それから18年後、私の暮らす6畳一間のアパートに着の身着のままで伯父が転がり込んで来た時には、驚きで声も出ませんでした。
伯父は胃がんの手術を終え、退院した後だったので、アルコール依存症の治療を受けていたかどうかはわかりませんが、どうやら断酒をしていたようです。
何も知らない私は、数日前に知り合いからもらった日本酒の一升瓶をテレビの脇に無造作に置いたままにしていました。
ある日の朝、伯父が突然話し始めたのです。
伯父「この一升瓶、どうしたんだ?」
私「知り合いにもらったんだよ」
伯父「そうか、なんか気になるな」
私「そう?休日前に飲もうかなと思ってるんだ」
伯父「そうか、休日前か・・・・わかった」
多分、こんなやり取りをしていたのです。
休日前となる当日、仕事から戻り楽しみにしていた日本酒を伯父と一緒に飲もうと思って、テレビの脇に無造作に置いてあった一升瓶を手にとりました。
「あれ? なんでこんなに軽いの??」
一瞬、自分の手の感覚を頭が理解しようとせず、現実を拒むための理由を探そうとしました。
実際、何が起きているのか分からなかった。
なんと、一升瓶は全て空になっていました。
せっかく楽しみにしていた日本酒を、しかも一升瓶を空にするなんて!
頭にきた私は伯父に注意をし始めたのですが、
「全て飲み干すって、ちょっと異常じゃないか?」と普通ではない違和感を感じました。
その日を境に伯父は、転がり落ちるように変貌していったのです。