アルコール依存症の恐怖6
恐怖からの逃走
益々エスカレートする伯父の奇行は、私の生活全てを異常なものに変えて行きました。
誰かに相談したくても、隠すべき身内の恥部と思っていたので、全ての気持ちを飲み込んでしまい、誰にも全てを打ち明けることができませんでした。
しかし、自分では隠しているつもりでも、当時の異常な生活ぶりは誰の目から見ても普通ではありませんでしたから、勇気を出して誰かにアドバイスを受けるなどすればよかったのかもしれません。
私の職場に金の工面をしに来た伯父に対して、機転を利かせた先輩が上手く対応をしてくれたおかげで、給料の前借りを断り、帰らせることができたそうです。
伯父は、私のアパートには帰らずに、どこかに行ってしまいました。
職場の先輩に迷惑をかけたことを、一言文句を言おうと思っていたのですが、帰って履きませんでした。
「もう、私には関係のないことだ」
そのように思うことにしたんです。
冷静に考えたら、どうして私が面倒を見なければならないのか・・・・。
幼い頃に両親の離婚によって2年間お世話になったことへの感謝は、忘れていませんでしたが、ここまで辛い思いをしなければならないのか・・・・。
もうこのくらいで、許してもらえないだろうか・・・・。
色々な気持ちが幾十にも湧き起こって来て、私は非情な決断をすることにしました。
もう私は、伯父とは関わらないと決めて、自分の生活を取り戻すことに全力を注ぐことにしたのです。
望まぬ来訪者
節約に節約を重ね、少しづつ生活を改善していく中で、アパートには以前のように友人が遊びに来るようになり、ビデオやギターや電話の権利も質屋に元金と利息を払って返してもらいました。
仕事も順調で、伯父が来る前と同じ程度の生活レベルとなり、普通の生活ができるようになりました。
伯父のことを完全に忘れる事はできませんでしたが、仕事に集中することで考えずにすみました。
そんな、ある休日の朝の事です。
アパートの扉を叩く音がしました。
すでに起きていたのですすが、友人や知り合いとは違うノック音に少しビビりながら、玄関の扉を開けに行きました。
そこには見知らぬ背広姿の男性が立っていたのです。
「どちら様で・・・・」
と言い終わらないうちに、背広姿の男性はアパートの中に入ってきたのです。
そして、大きな声で
「〇〇さんはいますか?」
と伯父の名前を言い、私の部屋のものを物色し始めたのです。
差し押さえです。
生まれて初めての経験でした。
借金もなく、税金も受信料の支払いも滞納していない私のアパートが強制執行されてしまったわけです。
私は、なんとか冷静を保ち、この部屋は自分が契約しており、ここにある持ち物は全て私のものであることを伝えました。
正直、差し押さえられて困るようなものも無いくらい貧乏でしたから、それほど危機感はなかったのですが、いきなりの出来事だったので心底ビビりました。
背広姿の男性は、2、3度キョロキョロした後、何かしら確認して、頭を下げて出て行きました。
伯父の呪縛からは、なかなか抜けきることができないことを感じた出来事です。
そして数日後の朝、またもや玄関を叩く音がしたのです。