アルコール依存症の恐怖 その2
伯父の変貌
伯父がアルコール依存症だということを知らなかった私は、一升瓶のお酒を半日で空けてしまうその酒豪っぷりに驚いたのではなく、居候の身で甥が友人からもらった記念のお酒を、一滴も残すことなく平らげてしまった伯父の行動に、今まで経験したことのない違和感を覚え、なんとく異常性を感じたのです。
普通ではない・・・・。
この時の直感は、幼い頃に身寄りのない私を引き取ってくれた伯父に対して大変失礼な感情であったかもしれませんが、日を追うごとに変化していく伯父の姿を見ていくことで確信に変わっていきました。
私の6畳一間のアパートに転がり込んで来た当時の伯父は、物静かでこちらが話しかけないと、遠慮して何も話せない有様で、まさに人生に疲れ果てて絶望の淵に落ちてしまった人という感じでした。
しかし、お酒を飲み始めてから雄弁になり、目線が上がって行き、しまいには図々しくなりました。私は温厚な性格ですし仕事も忙しかったので、少々頭にくることはあっても、なるべく気にしない様にして伯父の社会復帰を望んでいました。
幸いなことに?付き合っている女性もおらず、汚いアパートには友人も遊びに来なかったので、伯父にはなるべく自由にしてもらっていたのですが、ある日の朝、伯父の口から
「就職をするので、少しお金を貸してもらいたい」
と言われました。ようやく社会復帰をしてくれるのだと思い、感激して言われるままにお金を貸しました。確か1万円程度だったと思います。
数日後見事に就職を勝ち取り、伯父も毎朝出勤する様になりました。給料日には貸したお金も返してもらい、これで伯父も私の生活も好転する様に思えました。
そして、3ヶ月後に伯父は会社を辞めてしあうのです。
理由はよくわかりませんでしたが、結局生活は元に戻ってしまったのです。
この頃から、お酒の量がどんどん増えて、常にお酒の匂いが伯父の体から漂っていました。お金もあっという間に底をつき、流石の私もイライラを抑えるのが大変でした。
伯父は再就職に挑戦するために、少々まとまったお金を貸して欲しいと言いました。
朝、出がけにそんなことを言うもんですから、仕方なく銀行のキャッシュカードを渡し、暗証番号を告げると急いで仕事に出かけました。